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2016

2016年3月の読書まとめ

3月は回復

2016年3月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:5324ページ
ナイス数:927ナイス

3月は移動時間の長い出張が多かったこともあって、2月に比べればたくさん読めた。

村上春樹「職業としての小説家」


職業としての小説家

刊行されたのは昨年9月で、発売直後に購入してはいたものの、例のごとく積読本となっていた。

ようやく読んでみたわけだけど、これがとても面白かった。

村上春樹のエッセイは数冊読んだことがあるけれど、彼が小説家となり30年以上に渡ってそれを生業としてやってきたことを振り返りながら全12回のトピックに分けて述べている。

興味深かったのは、第1回「小説家は寛容な人種なのか」の中で、小説家として長く続けていける人についての考察。

小説をひとつふたつ書くのは、それほどむずかしくはない。しかし小説を長く書き続けること、小説を書いて生活していくこと、小説家として生き残っていくこと、これは至難の業です。(中略)そこにはある種の「資格」のようなものが求められます。(P.15-16)

二十年、三十年にもわたって職業的小説家として活躍し続け、あるいは生き延び、それぞれに一定数の読者を獲得している人たちには、小説家としての、何かしら優れた強い核(コア)のようなものが備わっているはずだと考えるからです。(P.26-27)

小説なんて書こうと思えばほとんど誰にだって書けると言いながら、それを職業として続けていくことの難しさ。それは頭がいいとか悪いとか、文才があるとかないとかには関係がなく、頭の中にある何かしらのテーマについて物語に置き換えていくという効率の悪い、鈍くさい作業を長きに渡って続けられるかどうかということなのだと解釈した。

また長編小説を書くときのスタイルについての第6回「時間を身につける−長編小説を書くということ」から。

長編小説を書く場合、一日に四百字詰原稿用紙にして、十枚検討で原稿を書いていくことをルールとしています。(中略)もっと書きたくても十枚くらいでやめておくし、今日は今ひとつ乗らないなと思っても、なんとかがんばって十枚は書きます。なぜなら長い仕事をするときは、規則性が重要な意味を持ってくるからです。(P.141)

第一稿を終えると、少し間を置いて一服してから(そのときによりますが、だいたい一週間くらい休みます)、第一回目の書き直しに入ります。僕の場合、頭からとにかく全部ごりごりと書き直します。ここではかなり大きく、手を入れます。(P.143)

その書き直しに、たぶん一か月か二か月はかかります。それが終わると、また一週間ほど置いて、二回目の書き直しに入ります。これも頭からどんどん書き直していく。ただし今度はもっと細かいところに目をやって、丁寧に書き直していきます。

しっかり養生を済ませたし、そのあとある程度の書き直しもした。この段階で大きな意味を持ってくるのが、第三者の意見です。僕の場合、ある程度作品としてのかたちがついたところで、まず奥さんに原稿を読ませます。(P.146)

でもそのような「第三者導入」プロセスにおいて、僕にはひとつ個人的ルールがあります。それは「けちをつけられた部分があれば、何はともあれ書き直そうぜ」ということです。(P.147)

今回の書き直しは頭から順番にやっていく必要はありません。問題になった部分、批判された部分だけを集中して書き直していきます。そして書き直した部分をもう一度読んでもらい、それについてまた討論をし、必要があれば更に書き直します。それを読んでもらい、まだ不満があれば、更にまた書き直します。そしてある程度片がついたところで、また頭から書き直して全体の流れを確認し、調整します。いろんな部分を細かくいじったせいで、全体のトーンが乱れていれば、それを修正します。そこで初めて編集者に正式に読んでもらいます。その時点では、頭の過熱状態はある程度解消されていますから、編集者の反応に対しても、それなりにクールに客観的に対処することができます。(P.148-149)

ちょっと長い引用になってしまったけれど、この一連のプロセスは僕にとってはかなり意外だった。

こう言ってはなんだけど、村上春樹の小説は、ふつうに読んでいると、そこまでの手間をかけたように見えずさらっと読めてしまう。だからそれを書くのも、天才作家の村上さんならサラサラッと書けてしまうんだろうなと、漠然と思っていた。

そうではなかった。ベタなたとえになるけど、優雅に見える白鳥は水面下では必死にバタ足しているような、地道で泥くさい作業の繰り返しの上に、村上春樹の小説は成り立っていたんだと知った。

他のトピックについての回も興味深かったが、このブログで書くのはこれくらいにしておきます。まだ読んでいないという方、アンチ村上の人はわからないけれど、村上ファンの人はさらに彼と彼の小説が好きになるんじゃないかと思う。

3月に読んだ本

七つの海を照らす星七つの海を照らす星感想
オフ会のために再読。
読了日:3月5日 著者:七河迦南
トランクひとつのモノで暮らすトランクひとつのモノで暮らす感想
最近、ミニマリスト本を立て続けに読んできて食傷気味になってきた感がある。前半で著者の衣類を公開していて、18着(下着類除く)というのは女性にしてはかなり少ないんじゃないだろうか。調理器具や食器も7つずつというのはすごい。自分も食器はもっと厳選すべきかな・・・。紙や書類を溜めないしくみづくりも見習いたい。「本や動画などの情報源は一度インプットしたら手放す」には異論もあるけど、ごく一部を除く大多数の本を読み返すことはないのだから、もっとドライにならないといけないのかな。
読了日:3月6日 著者:エリサ
職業としての小説家 (Switch library)職業としての小説家 (Switch library)感想
小説家になったきっかけから、オリジナリティ、長編小説を書くときのスタイル、芥川賞、海外進出等について語る自伝的エッセイ。長編小説は規則正しく午前中に一定量の文章を書いていく。書き上げたあとも奥さんに読んでもらい、何度も書き直す。さらっとさりげなく書かれたような文章の裏には弛まざる努力があるのだなあと。批判が多いことについても随所で言及しているけれど、それを上手く受け流しているんだなという印象。謙虚さと小説家としての自負が同居していて、村上さんのことがより好きになった。
読了日:3月8日 著者:村上春樹
ミニマリストという生き方ミニマリストという生き方感想
十数年前に「捨てる!技術」がベストセラーになった著者による、最近流行のミニマリストへのインタビュー等を通じて、彼ら彼女らの生き方を考察する本。モノを持たない、ミニマルな生活に憧れながらも、次々と出版されるミニマリストたちにどこかイライラを感じていたのだけど、そういう部分にも少し引いた立ち位置から焦点を当てている。ミニマリストとは新しい生き方への過渡期であり、やがて消滅していく(それが今後は当たり前になっていくから)というのはなるほど。
読了日:3月8日 著者:辰巳渚
30代で必ずはじめること、やめること (アスカビジネス)30代で必ずはじめること、やめること (アスカビジネス)感想
ありがちな自己啓発本ではあるけれど、著者自身がダメなところまでさらけ出していて親近感がわく。コミュニケーションについて、生活習慣について、すでにやっていることもあればアイタタタ…なこともある。何かに没頭を始める、というのは30代に限らずだろうけど、やりたい。
読了日:3月10日 著者:新田龍
幽霊たち (新潮文庫)幽霊たち (新潮文庫)感想
ポール・オースターを読んだのは「ガラスの街」に続いて2作目だけど、同じ「ニューヨーク3部作」とされる本書も負けず劣らず難解だった。筋書きもガラスの街とどこか似ていて、だんだん自分という存在が他人と同一化されていくかのような、不確かな感覚に陥る。ラストシーンの後、彼は一体どうなったのか…。
読了日:3月11日 著者:ポール・オースター
持たないヤツほど、成功する!持たないヤツほど、成功する!感想
最近のミニマリストブームに乗っかったかのようなタイトル。余計な仕事を持たない、偽物のプライドを持たない、モノを多く持たない、しがらみを持たない、寿命の無駄遣いをしない。スピード重要、即行動、それも余計なものを省けばこそ。「迷ったら買わない」という決断軸を持て。笑顔を愛せない人とは別れるべき。
読了日:3月12日 著者:千田琢哉
遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣感想
速読術の本は散々読んできたけれど、遅読家のための、というタイトルに興味をひかれて読んだ。手法としてはレバレッジ・リーディングなどのように(主にビジネス書の)飛ばし読み、拾い読み。物理的にも記憶的にもため込もうとしない読書「フロー・リーディング」。1日1冊読み切ると、はるかに深く理解できる。音楽を聴くのと同じように、全ての文章を記憶する必要はない。1%にめぐり合うために読む。ただ読むだけではなく、書くために読むことへ意識を変える。本を古いものから新しいものの順に並べる。3ヶ月ごとに本棚メンテナンスを行う。
読了日:3月12日 著者:印南敦史
また、同じ夢を見ていたまた、同じ夢を見ていた感想
デビュー作「君の膵臓をたべたい」がヒットして期待値が高い分2作目はハードルが高いだろうと思っていたが、そんな心配は不要だった。菜ノ花のような小学生でも大人でも、正しすぎるせいで周囲からはじかれるってよくあること。大人な3人の女性とのちょっと不思議な交流で、本当に大切にすべき選択をし、「幸せ」とは何かについて真剣に考えていく。軽妙な会話、絶対小学生じゃないだろ!とツッコミたくなる菜ノ花の喩え、(大体想像はついたけれど)軽くひねったオチと、楽しく読めた。
読了日:3月12日 著者:住野よる
オーディオ大全 (100%ムックシリーズ)オーディオ大全 (100%ムックシリーズ)感想
小説やエッセイを読んでたらだんだんアナログレコードに興味が出てきて、こんなムックも買ってしまった。完全にCD世代なので、アナログとデジタルの音の違いをそもそも知らないという。どれだけ違うんだろう…とワクワク。それにしてもオーディオ機器って、上を見始めると果てしなく高いね。このムックで出てきた評論家の面々のシステムの金額とかもうね。アホかと。かといってエントリー製品を買って安かろう悪かろうで買い替えるのもなあ…。お金を貯めながらしばらく勉強します。
読了日:3月13日 著者:
すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)感想
オフ会でお借りした本。校閲という、ひたすら文章の間違いを探す仕事でフリーランスになったヒロインの冬子。内向的で人づきあいも得意でない彼女がふとしたことから知り合った三束さんという年上の男性と交流を深めていく。と書くと恋愛小説なんだけど、冬子が彼と会うときは必ず酒を飲んでから、という恋愛小説らしくなさ。彼女の知り合いの女性たちが、それぞれの立場から冬子に言いたい放題愚痴を吐くシーンの方が印象的だった。
読了日:3月15日 著者:川上未映子
節約する人に貧しい人はいない。節約する人に貧しい人はいない。
読了日:3月17日 著者:中川淳一郎
1週間で8割捨てる技術1週間で8割捨てる技術
読了日:3月17日 著者:筆子
これからの思考の教科書 ~論理、直感、統合ー現場に必要な3つの考え方~これからの思考の教科書 ~論理、直感、統合ー現場に必要な3つの考え方~
読了日:3月19日 著者:酒井穣
断捨離パンダのミニマルライフ断捨離パンダのミニマルライフ
読了日:3月21日 著者:おはぎ
小説 秒速5センチメートル (角川文庫)小説 秒速5センチメートル (角川文庫)
読了日:3月22日 著者:新海誠
その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)
読了日:3月24日 著者:河野裕
居酒屋ぼったくり〈4〉居酒屋ぼったくり〈4〉
読了日:3月25日 著者:秋川滝美
人生一度は行ってみたい絶景道人生一度は行ってみたい絶景道
読了日:3月26日 著者:
音楽がもっと楽しくなる オーディオ「粋道」入門音楽がもっと楽しくなる オーディオ「粋道」入門
読了日:3月28日 著者:石原俊
カラー版 大人のためのアナログレコードの愉しみ方 (COLOR新書y)カラー版 大人のためのアナログレコードの愉しみ方 (COLOR新書y)
読了日:3月30日 著者:角田郁雄
Ruby技術者認定試験合格教本 Silver/Gold対応 Ruby公式資格教科書Ruby技術者認定試験合格教本 Silver/Gold対応 Ruby公式資格教科書
読了日:3月31日 著者:増井雄一郎,小川伸一郎,株式会社日立ソリューションズ牧俊男

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