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2016

2016年9月の読書まとめ

9月も低調

2016年9月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4971ページ
ナイス数:522ナイス

9月も8月に引き続き読書ペースは上がらなかった。長期の旅行と出張が続いたせいもあるかも知れない。

村上海賊の娘

9月の頭に和田竜「村上海賊の娘」文庫全4巻を読んで、7月から続けていた新潮文庫の100冊読破チャレンジを達成した。

本屋大賞を獲ったこの作品、単行本でもすでに読んでいたが戦国時代末期の村上海賊(水軍ともいう)の当主・村上武吉に長女がいたという設定で(設定というか実際に娘がいたという史料はわずかに残っているらしい)、海賊行為に明け暮れ合戦に憧れる破天荒な女・景(きょう)の活躍を描く歴史小説。


この作品、景のキャラクターが面白い。年のころは二十歳、背丈は六尺に及ばんとし、醜女にして悍婦。誰も嫁のもらい手がないという設定。醜女、つまりブスとまわりから散々言われているわけだが、目は鷲のように大きく鋭く、顔の彫りは深く、鼻は高い。つまり醜女というのは16世紀当時の基準でみればということで、現代の読者視点からすると「あれ?これ美人じゃないか」となるわけだ。しかも背丈も高いがすらっとしていて脚は長く、今で言えばスーパーモデル並の体型。そんな作中登場人物とのギャップにニマニマしながら読み進めていくと、泉州海賊の若頭・眞鍋七五三兵衛をはじめとした他の登場人物たちも実に魅力的に描かれている。

9月に読んだ本一覧

残穢 (新潮文庫)残穢 (新潮文庫)感想
単行本で読んだが、新潮文庫の100冊ということで再読。作家の「私」に寄せられた、あるマンションの一室で起きる奇妙な物音の話からはじまり、マンションの過去の住人を辿るうちに芋づる式に怪奇現象の連鎖が明らかになっていく様子が恐ろしい。特定の人物や場所、物に起因するならまだしも、過去の怪異に遭った人が穢れに感染し、場所を移しても起こり、それによって命を落とす人がいればさらに穢れは増幅し…。防ぎようがないだけに、ある意味最恐の怪異かも知れない。
読了日:9月3日 著者:小野不由美
村上海賊の娘(一) (新潮文庫)村上海賊の娘(一) (新潮文庫)感想
戦国末期、瀬戸内の海にその名を轟かせた村上海賊(村上水軍)。その名は知っていたけれど、恥ずかしながら詳細は知らなかった。大阪本願寺の一向宗門徒と織田信長軍の戦にまつわる村上海賊の筆頭、村上武吉の長女・景(きょう)が主人公の物語。女性ながら海賊に似つかわしい性格と武に長けた身のこなし、何より長身で彫りが深く、巨大な両眼と現代のトップモデルのような見目姿ながら当時の美的価値観からは醜女(しこめ)とされているキャラクターが秀逸。
読了日:9月6日 著者:和田竜
村上海賊の娘(二) (新潮文庫)村上海賊の娘(二) (新潮文庫)
読了日:9月8日 著者:和田竜
村上海賊の娘(三) (新潮文庫)村上海賊の娘(三) (新潮文庫)
読了日:9月10日 著者:和田竜
村上海賊の娘(四) (新潮文庫)村上海賊の娘(四) (新潮文庫)
読了日:9月12日 著者:和田竜
人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」 (光文社新書)人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」 (光文社新書)
読了日:9月14日 著者:田坂広志
島はぼくらと (講談社文庫)島はぼくらと (講談社文庫)感想
久しぶりの辻村深月。単行本でも読んだが、文庫で再読しても面白い。故郷の持つ残酷性と暖かさとを両面から描いていて、それを包み込むように物語全体に感じられる瀬戸内海の輝きと透明感。その海に浮かぶ冴島を舞台にした小説は辻村深月作品の中でも一番好きだ。
読了日:9月15日 著者:辻村深月
華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)感想
ホワイトハート文庫版で刊行直後に読んだはずだけど、再読したらかなり内容を忘れていた。同じ短編集だがかの世界の市井の人々を描いた「丕緒の鳥」とは異なり、過去の十二国記シリーズに登場した登場人物の後日譚や、初登場の王や麒麟の話もある。特に理想の道を追求したはずの才王の失道を描いた「華胥」は身につまされた。
読了日:9月17日 著者:小野不由美
はじめてのOSコードリーディング ~UNIX V6で学ぶカーネルのしくみ (Software Design plus)はじめてのOSコードリーディング ~UNIX V6で学ぶカーネルのしくみ (Software Design plus)感想
超速読で読了。UNIX V6のソースコードを読み解く解説書。著者いわく1万行とカーネルとしてはコンパクトなサイズながら現代的なカーネルの基本機能は実装されているため、初学者にはもってこいとのこと。とはいえざっと読んだだけではとても理解しきれない。実際のソースコードを読みながら、何度も読み直すべき本。
読了日:9月19日 著者:青柳隆宏
鬼談百景 (角川文庫)鬼談百景 (角川文庫)感想
「残穢」と対を成すような作品。こちらは現代の百物語というところかな。「残穢」の中で「私」が読者から怪談を募集していたのもこの作品のためということか。ひとつひとつのエピソードは短いが、なぜそんな怪奇現象が?という合理的な説明はなされないまま終わるので、怖さが増している。
読了日:9月23日 著者:小野不由美
やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につけるやり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける感想
人生で偉大な業績を達成するのに必要なのは、才能か、努力かという研究。著者いわく、才能よりも「やり抜く力」すなわち情熱と粘り強さの方が重要だという。ジョフ・コルヴァン著「究極の鍛錬」と似た論旨だなと思ったら、そちらのキーワード"deliberate practice(『究極の鍛錬』と訳されている)"が本書でも登場する(こちらでは『意図的な練習』と訳されている)。本書の方がより心理的側面に焦点を当て、内的要因と両親やメンターなどの外的要因の双方から考察している。「究極の鍛錬」と合わせて読みたい良書。
読了日:9月24日 著者:アンジェラ・ダックワース
「この世界の片隅に」公式アートブック「この世界の片隅に」公式アートブック
読了日:9月24日 著者:
小説 言の葉の庭 (角川文庫)小説 言の葉の庭 (角川文庫)感想
単行本で読んだが、「君の名は。」で新海誠ブームが来ているこの時期に文庫で再読。雨のそぼ降る新宿御苑の美しい緑の情景を思い浮かべながら読んだ。当たり前だけど、アニメーションと小説では表現手法がまるで違っていて、映画で何気なく登場人物が発した言葉に秘められた思いや背景、ちちっとしか登場しないキャラクター達の内面描写も丁寧に書かれていて、新鮮な驚きを味わえる。小説版だけの二人のその後の描写もよい。
読了日:9月26日 著者:新海誠
黄昏の岸 暁の天 十二国記 (新潮文庫)黄昏の岸 暁の天 十二国記 (新潮文庫)感想
泰麒と驍宗に一体何が起こったのか。慶国の景王陽子の元に単騎、満身創痍で助けを求めに来た元・戴国将軍の李斎。いかなる理由があっても他国に兵をもって侵してはならないという不条理とも思える天の摂理に対し、なんとか泰麒を捜す方法を模索する陽子や延王尚隆、延麒六太たち。泰麒が見つかったものの、麒麟の力そのものである角を失い、血の穢れに身体は病み衰えたその惨状に思わず目を背けたくなってしまう。あまりに無力な泰麒と李斎の二人きり、それでも戴国に戻る決意をする。どうかその行く末に光明がさしてほしいと祈らずにはいられない。
読了日:9月30日 著者:小野不由美

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