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2022

2022年4月の読書まとめ

4月はまずまず読めた

4月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3618
ナイス数:569

4月は11冊。2桁は読めたものの、前回の記事で触れていたほどには読書量が伸びませんでした。

とはいえ、読んだ本はなかなか粒ぞろい。

ストーナー(STONER)

珍しく、米国文学を読みました。

小説が読みたいけれど、「驚愕のどんでん返し」だとか、「ラスト10ページ、あなたは涙を禁じ得ない」みたいなキャッチコピーとは対極の、静謐な物語が読みたいと書店を2時間くらい彷徨った末に手に取った1冊。

19世紀末から20世紀前半の米国中西部で文学の准教授として生涯を終えた男性の物語。

貧農の家に生まれた主人公ウィリアム・ストーナーは親の薦めで大学の農学部に入学したが、たまたま受けた文学の講義に惹かれて文学を専攻し、やがて恋をして結婚し・・・というお話。

主人公のストーナー視点でいうと、決して平坦な人生ではなかったと思う。

親の期待を裏切って文学の道に進んだこと、第一次世界大戦に数少ない親友のひとりが出兵し、亡くなったこと、結婚生活がうまくいかず冷戦状態になったこと、気に入らない生徒に落第点を与えたことでライバル教授に恨みを買い、以降の教員生活で不遇をかこったこと・・・。

平坦ではないし、職場でも家庭でもままならないことが多かったけれど、打ち込めること(文学)に出会えてそれを仕事にできたし、不倫関係ではあるものの情熱的な恋の相手にも巡り会えた。誰も手に取らないかも知れないけれど、自身の研究の成果を本の形にすることもできた。

最期の瞬間に自著を手にもったまま逝った彼は、幸せな人生だったんじゃないだろうかと思う。

非凡ではなかったかも知れない、誰にでもあり得そうな人生なだけに、思わず自分の身をストーナーに重ねながら読んでしまう。

自分の中で繰り返し何度も読み返す小説ってそれほど多くないのだけど、これはそうなりそうな予感がする、そんな1冊だった。

2022年4月に読んだ本一覧

ストーナーストーナー感想
静かだけど読み応えのある小説を探していたときに書店で偶然目に留まった本。19世紀末から20世紀中盤までのアメリカ中西部に生きたウィリアム・ストーナーの人生は、劇的ではないけれど波風が立たないわけではない、誰もに起こり得るような人生だった。結婚や家庭生活は決してうまくいったわけではないが、少なくとも愛する人には巡り会えた。偉業を成し遂げたわけではないが生涯打ち込める文学にも出会えた人生は、幸福だったといってよいのではないだろうか。翻訳家・東江一紀氏の遺作でもあり、美しい文章は繰り返し読みたい1冊になった。
読了日:04月02日 著者:ジョン・ウィリアムズ
人でなしの櫻人でなしの櫻感想
しがない日本画家の主人公清秀と、偉大な日本料理人の父と、父による犯罪被害者の女性が織りなす偏執と狂気の世界。序盤の日本画の技法や料理の描写、終盤の余命わずかな清秀の鬼気迫る創作風景は見応えがあった。血縁の確執に囚われる主人公というのは遠田作品のテンプレだが、今作では珍しく清秀が受け身ではなく能動的に悪の道に走るというのがいつもとは違っていたかな。父が清秀を憎む理由が弱いと感じたのと、清秀の最後の執念とそれに殉じた蓮子は客観的にはただの犯罪者とその被害者にしか世間や読者の目には映らないであろうことが惜しい。
読了日:04月03日 著者:遠田 潤子
果てなき渇望―ボディビルに憑かれた人々 (草思社文庫)果てなき渇望―ボディビルに憑かれた人々 (草思社文庫)感想
千田琢哉さんの推薦本から。ボディビルダーに対する自分のイメージというのは、本書でもたびたび言及されるように、気持ち悪いとか、あそこまでムキムキになるのはちょっと…というのが正直なところだった。本書を読んでもそのイメージは変わらないが(変わらんのかい!)、コンテストで入賞するような筋肉をまとうことは、まず身体的素質が重要でありなろうと思ってもなれるものではないこと、ただトレーニングしているだけでも決してできないことはわかった。本書に登場する人々が、ボディビルのコンテストで勝つために、どれだけ(続)
読了日:04月07日 著者:増田 晶文
お金か人生か 給料がなくても豊かになれる9ステップお金か人生か 給料がなくても豊かになれる9ステップ感想
書店の棚差しの1冊をたまたま手に取ったが、とてもよかった。いわゆるFIRE本の先駆けらしい。お金=生命エネルギーという考え方も面白いが、それよりも刺さったのは自分の実質時給を調べるステップと、収入と支出を1セント単位で把握し、収支表を作るステップ、そしてウォールチャート(長期の収入と支出のグラフ)をつくるステップだ。日本の(だけかは知らないけれど)マネー本だとズボラでもお金を貯めれるとか、家計簿はつけなくてもいいと読者を甘やかす論調のものが多いが、本書はそんな妥協は一切許さない姿勢が気に入った。
読了日:04月12日 著者:ヴィッキー・ロビン,ジョー・ドミンゲス
ワインに染まる - パリから始まる美酒の旅 (単行本)ワインに染まる - パリから始まる美酒の旅 (単行本)感想
パリ在住の著者によるエッセイ。ホメロスの「イーリアス」に登場する「ワイン色の海」という言葉に思いを馳せるエピソードから始まり、著者がこれまでに出会ってきた様々なワインやシャトーのエピソードが語られる。ワイン発祥の地と言われるグルジア(ジョージア)を訪ねた話や、イスラエルのワインの話などもあり興味をそそる。ブルゴーニュワインを発展させたブルゴーニュ公や、中世ではワインがどのように飲まれていたかという話も面白い。希少で高価なワインや何十年物のワインを飲む機会に恵まれてきた著者が羨ましい。
読了日:04月17日 著者:戸塚 真弓
病気、不調知らずのからだになれる ふるさと村の食養ごはん病気、不調知らずのからだになれる ふるさと村の食養ごはん感想
ふるさと村の創始者であり監修の秋山龍三さんは本書の刊行直前に静かに息を引き取ったそうだ。彼の意思を継いだ山田剛さんが完成させた。前作はふるさと村の食養術の概要やそれによって健康を取り戻した人たちの体験談が主な内容だったが、本書はその実践編。四季毎の野菜の特徴や成分・効用、歴史とともにレシピを掲載。下ごしらえも書いてあってありがたいし、使うのは基本調味料だけなので作ろうとしても作れないなんてことがないのがいい。一度挫折したぬか漬けにもまた挑戦したくなるな。
読了日:04月21日 著者:山田 剛,草野 かおる
シンプリスト生活 (BUSINESS LIFE)シンプリスト生活 (BUSINESS LIFE)感想
何だか感想が書きづらくてしばらく放置していた。著者はミニマリストではなくシンプリスト、とのことだけど、日本で知名度のあるミニマリストの中にも極限までモノを減らすだけでなく、著者と同じように余白を重視するとか、減らした分持つモノにはこだわるといった点を大事にしている方はいる。新しい言葉を使って差別化したかっただけのように感じられてしまった。掃除や食の習慣については共感できたし、インテリアの整え方もデザインを仕事にしているだけあって参考になるし、装丁や本文中のイラストは美しかった。
読了日:04月21日 著者:Tommy
人生が変わる 紙片づけ!人生が変わる 紙片づけ!感想
昔に比べると大分スッキリしたけれど、気がつくと部屋が雑然としている。そしてその原因は知らず知らず溜まっている紙類であることが多い。本書は紙の片づけに特化した珍しい1冊。残すのは「金目の紙」と「使う目的がある紙」だけ。入ってきた紙は4つに分け、ファイルボックスを6つ用意して紙をジャンル分けする。情報だけあればいい紙はデータ化してクラウドを利用する。細かいテクニックはまだまだあるけれど、これらはぜひ実践してみたい。
読了日:04月23日 著者:石阪 京子
オブリヴィオン (光文社文庫)オブリヴィオン (光文社文庫)感想
遠田潤子さんのマイベストは「アンチェルの蝶」だったが、本書「オブリヴィオン」を文庫で再読してみて、これも傑作だと再認識した。妻を殺して服役し、出所した主人公・森二の痛ましく辛い過去が徐々に明らかになると共に、彼の背負った罪が軽くなるどころか一生向き合い続けなければいけないと突きつけられる。赦しを乞う相手はもうおらず、決して帰ってこない。安易な救いが与えられるわけではないが、決して自分の犯した罪を忘れず、主人公がそれでも前を向いて生きていこうとする、これが人間の生なのだと見せつけられた。
読了日:04月27日 著者:遠田 潤子
デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方 (ハヤカワ文庫 NF 573)デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方 (ハヤカワ文庫 NF 573)感想
単行本で読んだが、文庫でも再読。単行本刊行当時よりもさらに、ソーシャルメディアやソーシャルゲームがスマートフォン使用者を釘付けにする中毒性は高まっている気がする。自分は昨年、長年使っていたTwitterを削除してみたが、インスタグラムや今感想を書いている読書メーターも「ついつい見てしまう」点では同じ。著者が述べているように、スマートフォンからSNSアプリを削除し、現実世界での趣味を持つことをもっと真剣に検討すべきかも知れない。
読了日:04月29日 著者:カル・ニューポート
最強脳 ―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業― (新潮新書)最強脳 ―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業― (新潮新書)感想
帰省時に家族から借りて読んだ。「スマホ脳」の著者が十代やその親向けにかみ砕いて書いたような内容?(なお「スマホ脳」は未読)。頭を鍛えたいならとにかく運動がよいというのが本書の主張。目的別に章立てされているけど結論はだいたい同じなのでさらっと読めた。
読了日:04月30日 著者:アンデシュ・ハンセン

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