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2016

2016年1月の読書まとめ

1月は堅調

2016年1月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:4720ページ
ナイス数:808ナイス

1月は20冊には届かなかったものの、12月よりは読めた。

昨年から流行している「ミニマリスト」関連の本も何冊か読んだが、今月のベストはダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」だった。

アルジャーノンに花束を

この作品のあらすじ自体はずっと前から知っていた。というのも、10年くらい前にユースケ・サンタマリア主演のテレビドラマ化されたのを観ていたから。

ただ原作は未読で、数年前に文庫本を買ったものの読まずに詰んだままになっていた。

先日に知り合いから面白いので読んだ方がいいよと促されて、ようやく読んでみた。

結論から言って今まで読まずにいたのがもったいないと思うほどよかった。

いや、「よかった」という言葉で片付けていいのかどうか。

あらすじを知っていても、映像で表現されるのと文章で綴られるのは別の体験だというのがよくわかる。というと、過去に観たテレビドラマがつまらなかったように聞こえるかも知れないが、そんなことはないです(実際、ユースケ・サンタマリアの知的障害者から天才になった後とを演じ分ける演技は今でも見事だったと思う)。

主人公のチャーリー・ゴードンの手記という形で原作は語られていくのだけれど、ひらがなばかり、句読点なし、誤字脱字だらけの文章が徐々に高度な文体へと変化していくことでチャーリーの知能の変化を表現していて、それだけでも読み応えがある。

さらに、手術をチャーリーが急激に知能向上したことにより、それまで彼をからかったりしながらもよい交流関係を築いていたパン屋の店員たち、障害者教室のアリス先生との関係が悪化していく。天才的な頭脳を得ることと、優しく誰からも好かれる人間性は両立しないのか?決してそんなことはないと思うけれど、作中のチャーリーは少なくともかつての自分らしさを失い、女性と静的な関係に及ぼうとするたびに乖離した過去の自分とせめぎ合うなど苦しむことになる。

また家族(母親・父親・妹)との過去も身につまされる。母親も父親も、ただありのままの彼を愛してやることはできなかったのだろうか。特に母の強迫観念ともいえる、息子が賢くなって欲しいという願いは、家族と離れ離れになった後もチャーリーを縛る鎖になっていた気がする。

後半、彼の知能が少しずつ退行していく過程も、残酷なまでに彼の苦しみが表れていて読むのが辛かった。

ただ、全体的に苦しみ悩む描写が多かったとはいえ、チャーリーが手術によって高い知能を得たことが不幸せだったのかというと、そうとも言い切れない気がする。読書メーターの感想にも書いたけれど、知的障害者のままではできなかった数多くの体験を、彼はすることができたのだから。

読書メーターに私的ベストセレクションの本をそろえた本棚を作成しているのだけど、この本はひさしぶりに新規追加される一冊に決定しました。

babooconさんのベストセレクション本棚 - 読書メーター

1月に読んだ本

人にはどれだけの物が必要か: ミニマム生活のすすめ (新潮文庫)人にはどれだけの物が必要か: ミニマム生活のすすめ (新潮文庫)感想
2016年1冊目。タイトルから最近流行りのミニマリズム本のような内容を想像していたら全然違ってズッシリと重かった。ゴミでも壊れた製品でもできる限り拾ってリサイクル/修理して使うなどし、資源を大切にする生活を何十年も続けてきた著者。経済最優先の価値観から地救(球)の価値観への転換を説く。20年以上も昔に書かれた本だが、残念ながら今も人類は変わっているとは言えない。無駄なモノを買わない、買い物袋は持参する、電気や水も無駄に使わない…ベタで地味だけど、個人レベルではそういうことを気をつけていくしかないのかな。
読了日:1月2日 著者:鈴木孝夫
シリコンバレー式 自分を変える最強の食事シリコンバレー式 自分を変える最強の食事感想
再読。この本を読んでから完全無欠コーヒー(バターコーヒー)を試してみてる。一定の効果はあるけれど、人には薦めづらいなという印象。糖質制限と方向性は同じなのだけど、薦められている食品が相当限定される、主要な食品(グラスフェッドバター、MCTオイル、グラスフェッドビーフなど)がかなり高価、日本人になじみ深い食材(大豆食品全般、牛乳、チーズ、玄米など)が全否定されている、食事を摂る時間が普通のサラリーマンには難しめ、などがその理由。僕はバターコーヒーと炭水化物控えめの食事は続けてみますけどね。
読了日:1月3日 著者:デイヴ・アスプリー
江ノ島西浦写真館江ノ島西浦写真館感想
三上延さんは「ビブリア古書堂」以外の作品は短編はあっても一冊丸ごとは初めて読んだ。舞台は江ノ島で、古い写真館の閉館整理をすることになった繭が未渡しの写真にまつわる秘密を解いていくミステリー仕立て。ビブリアと似通った点も多いけれど、主人公の繭の人間くささ(特に学生時代)がリアリティを感じる。写真にまつわる謎解きは古い時代の写真技術と現代のデジタル技術がうまくミックスされていて変にノスタルジックすぎず良い感じ。最後の短編のトリックはやりすぎだろ…と思わないでもないけど。続編は出たりするのだろうか。
読了日:1月3日 著者:三上延
なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?感想
想像していたのと少し違って、風水とか入ってた。でも確かに環境を変えることで人は良くも悪くも影響されるものなのだろうな。
読了日:1月5日 著者:八納啓創
アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)感想
昔ユースケ・サンタマリアが主演したドラマであらすじは知っていたけれど、原作小説は初めて読んだ。一貫してチャーリーの手記という形式で、文体の変化だけで彼の知能の向上を表現しているのがすごい。超知能を得た代わりに友人を失いパン屋という居場所も失った彼と、以前の白痴の彼と、どちらが幸せだったのか。天才となった彼は苦しんだけれど、以前のままでは決してできなかった素晴らしい体験もたくさんしたわけで。とても幸不幸の二元論では語り尽くせないものがあると感じた。
読了日:1月10日 著者:ダニエルキイス
まんがでわかるLinux シス管系女子 (日経BPパソコンベストムック)まんがでわかるLinux シス管系女子 (日経BPパソコンベストムック)感想
たまに買っている日経Linuxの連載マンガが書籍化。絵柄もかわいくて良いし、Linuxのコマンドラインでの操作やシェルスクリプトのさわりについて楽しみながら読める。意外とこういう基礎の基礎がまとまった書籍ってないので保存版ですね。
読了日:1月10日 著者:Piro(結城洋志)
ミニマリスト日和ミニマリスト日和感想
夫婦でミニマリストのおふみさん。手描きイラストと文字がかわいいです。ファッションの章は完全に女モノなので参考にならなかったけれど(笑)この人も元はモノが多い住環境だったとのこと。結婚してからここまでできるかどうかは、価値観が合うパートナーがいればこそだろうな。
読了日:1月11日 著者:おふみ
空飛ぶ広報室空飛ぶ広報室感想
久しぶりの有川浩。たしかTVドラマ化されたやつですよね(観てないけど)。航空自衛隊の広報室という全くなじみのない職場のお仕事小説というところか。一般人にはなじみの薄く理解され難い自衛隊という組織の悲哀や誇りが、有川さんらしくコメディっぽい軽さの中にも織り交ぜられて、盤石の面白さ。今回はヒロインと主人公の青年がメディア側と空自という立場のせいか、互いに相手を大切に想うようになりながらも甘さはごく控えめだった。「あの日の松島」はもし自分や家族が彼ら・彼女らの立場だったら…と想像して胸が締めつけられた。
読了日:1月13日 著者:有川浩
持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない感想
phaさんの著書は2冊目。先に新刊の「もたないものリスト」の方を読んだのだけど、こちらの方がしっくりきた。こんなにゆるく生きてもいいんだ、と少し元気づけられる。
読了日:1月14日 著者:pha
カラダにいい!  がカラダを壊す (日経プレミアシリーズ)カラダにいい! がカラダを壊す (日経プレミアシリーズ)感想
ダイエットしたり、ジムなどでカラダを鍛えたりマラソンをしたりと健康志向の強い人ほど実はカラダを損ねてる、という主張はそうなのかも知れない。けれどじゃあどうすればいいの、という具体的な方法論がなくて参考にはならなかったな…。
読了日:1月18日 著者:亀田圭一
村上春樹 雑文集 (新潮文庫)村上春樹 雑文集 (新潮文庫)感想
タイトルとおり、村上春樹さんの単行本初出や未収録だった寄稿文やインタビュー記事などの雑文集。内容としてのまとまりがないので小説に比べて読みづらさはあるけれど、ジャズへの造詣や小説を書き始めたきっかけ、近所同士の画家の方々との交流など興味深い。
読了日:1月21日 著者:村上春樹
貧乏入門貧乏入門感想
再読。リフレイン読み2巡目5/10(通算16回読了)。昨年あたりからミニマリストとかミニマリズムという言葉がバズっている気がするけれど、著者の小池龍之介さんはそのかなり前からミニマリズム的生活を実践されてたんですよね(引っ越されたようだし、最近の生活はどうか知らないけど)。
読了日:1月21日 著者:小池龍之介
異類婚姻譚異類婚姻譚感想
芥川賞受賞作ということで、読んでみた。普段は受賞作だからといって手に取らないんだけど。伴侶の顔が自分そっくりになったり、ふとした時に人の顔をとどめなくなったりするのはメタファーなのかなんなのか。表題作以外も不思議な展開の短編集だった。
読了日:1月22日 著者:本谷有希子
出世しない技術出世しない技術感想
出世しない技術=結果的に出世する技術?個人的には出世なんてしたくない ですねー。今の主任という肩書きすら重い…。
読了日:1月24日 著者:梅森浩一
脊梁山脈 (新潮文庫)脊梁山脈 (新潮文庫)感想
読むのに時間はかかったけれど、骨太の小説だった。戦争と敗戦、そして復興期の日本。主人公の矢田部は幸運にも叔父の残した遺産で働く必要のない環境を得る。そんな彼がのめり込んだのは復員の列車内で知り合った小椋康造という男からつながる木地師の一族と日本人の起源に纏わる歴史探求だった…。天皇の起源に関する歴史解釈の大胆な仮説は読む人を選ぶ気がするけれど。二人の女性とのつかず離れずといった関係は純文学のような雰囲気を味わえる。
読了日:1月28日 著者:乙川優三郎
雨・赤毛 (新潮文庫―モーム短篇集)雨・赤毛 (新潮文庫―モーム短篇集)感想
モームは2冊目。こちらは短編集だが、長編の「月と六ペンス」とはまた違った面白さがある。帯で激賞されている「雨」よりも「赤毛」の方が好きだな。
読了日:1月29日 著者:サマセット・モーム
少ない物ですっきり暮らす (正しく暮らすシリーズ)少ない物ですっきり暮らす (正しく暮らすシリーズ)感想
家族4人でのミニマル生活を実践している著者の一家。独身者よりも地に足がついていて好感が持てる。捨て魔でもないし一気に断捨離したわけでもないというので、元々こういうのが合っていたのかな。それにしても、こんまりさんやゆるりまいさんもそうだけど、ミニマリストというのは食事/料理にはそれほど興味がないのかな?ファッションやインテリアに比べて調理器具や食生活の紹介はあっさりしている気がする。
読了日:1月30日 著者:やまぐちせいこ
正しい家計管理正しい家計管理感想
再読。この本に書かれている内容、予算を立てたり入金・出金それぞれに専用口座を設けたりとかなり面倒くさいけれど、最近無駄づかいが激しい自身を省みると、物理的に使いすぎない仕組みづくりというのは必要かも知れない…と思った。
読了日:1月31日 著者:林總

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